JALのマイルと島ぐらし

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離島の救急搬送の話

f:id:Prometheo:20170226025134j:plain今回は『離島の救急搬送の話』です。


離島エリアで急な病気やケガをした場合、どのような対処が考えられるでしょうか。
先日、ご近所の3歳になる子どもが誤飲をしてしまい、病院への搬送を手伝った経験をもとに記してみます。
(*幸いにも、子どもは翌日元気に島へ帰ってきました。)


① 初期対応。
離島とはいえども、先ずは119番へ通報しましょう。
そして、電話口から病人・ケガ人の状態をできるだけ細かく伝え、指示を仰ぐ。

*医療の心得のある方なら、ご自身で対処できるのでしょうが、一般的にみて生兵法は怪我の元。症状を悪化させる要因となり得ますので、専門機関からの指示に基づいての対処をお勧めします。

*島内には診療所など医療機関があるかと思われますが、ごく限られた人数で診療をしています。医師不在の可能性が高く、小さな診療所では結局対処できないケースもありますので、今回も子どもの母親は119番への通報を優先していました。


② 救急搬送先を考える。
近場の診療所でしたら、乗用車を使っての搬送となりますが、その診療所で対処が難しいケースでは大きな病院への搬送を考えなければなりません。

離島から搬送する方法として、海路と空路の2つがあります。
(*患者を動かせない場合は、医師側に島へ来てもらうのですが、離島内での医療行為には自ずと限界があります。命を救うには多少の無理をしても、大きな病院への搬送となるでしょう。)

その時の気象条件にもよりますが、昼間であればほぼ問題なく定期船やヘリコプターを使う事ができます。
(*強風や波などの状態で、運航が難しい場合もあり。)

しかし、夜間の搬送はかなり難しくなります。定期船の運航は日没前までとなり、同様にヘリコプターも視認性の低下から夜間の飛行は一般的に行わないそうです。

*実際に、誤飲した子どもの母親が119番へ電話した際も、島内の診療所では対処ができないので、常に子どもの様子を見つつ、朝一番の船で病院まで来るようにと最初の指示がありました。(pm22:00頃の電話)


③ 朝まで船を待てない場合。
私が体験したケースでは、一時的に子どもの状態は落ち着いていましたが、夜間であっても母親は一刻も早く診てもらいたいと病院に掛け合っていました。

そこで、夜間に島から島へ渡る方法を模索することに。
⑴ 船会社のチャーター便を利用。
⑵ 個人で所有している船を利用。
⑶ 夜間航行可能なヘリコプターを要請。


⑴…船会社の事務所は定時(pm19:00頃)で無人となるので、既に運航が決まっているチャーター便に便乗させてもらう。
但し、チャーター便の船員(現場)は契約問題もあり、借り主の許諾無しには絶対に乗せてはくれない。

⑵…島では漁をしていたり、観光用の小型船がある。
但し、夜間用の灯標が付いていないものが大半で、そもそも夜間の運航実績がなく航路が分からない。

⑶…通常、民間のヘリコプターは夜間の航行はしないが、訓練を受けている海上保安庁のヘリコプターは夜間航行にも対応している。
但し、病院(医師)からの要請が必要。今回は朝まで待つようにと最初の指示があった。


選択肢としてあげてはいるが、個人手配とし⑶はできず、⑵も二次被害の観点から不可。
⑴を母親に説明してみたところ、ダメで元々という事で港へ向かう。

その晩の借り主は、島内にある大きめのホテル。
フロントデスクに事情を説明したところ、チャーター便への同乗を許可する権限は、総支配人と支配人だけで両名とも不在。
十数分ほど先方が内部で掛け合ってくれたようで、救急搬送ならばとの事で同乗の許可を得た。
(*今回は特に幼い子どもが患者であり、ホテル側の特別な計らいに感謝。)

船員に借り主からの許諾の旨を伝え、病院からも客船ターミナルで救急車を待機してもらえる事となり、結果的に母子はチャーター便へ便乗することができました。


今回は、偶然チャーター便があり、借り主の厚意で夜間の救急搬送が可能となった稀なケースだと思われます。
もし、チャーター便が無かったとしたら、子どもの容態を一晩中危惧しなければならないのが離島の現状でしょう。

政府や自治体は、へき地医療の充実を掲げていますが、すぐに拡充させるのはまだまだ難しい問題です。

短期滞在であっても、永住であっても、病気やケガはいつ降りかかるか分かりません。
この記事が離島滞在の参考になれば幸いです。


…以上。『離島の救急搬送の話』でした。



平成28年 総務省の統計では、全国の救急車の数は6210台。全国消防防災ヘリコプターは76機 (消防庁 5機・消防機関 31機・地方自治体 40機)。
(*但し、佐賀県沖縄県には防災ヘリの配備は無し。八重山地方では、防災ヘリやドクターヘリに代わりに、海上保安庁のヘリコプターが2機配備されている。)

救急車による搬送人数…6,054,815件
消防防災ヘリによる搬送人数…3,375件

《全国平均》
救急車の現場到着時間… 8.6分
病院への収容時間…39.4分
総務省平成28年版 救急救助の現況〜 より

海上保安庁 〜救急救助体制について〜 より